♪おてぶしてぶし てぶしのなかは へ〜びのなまやき かえるのさしみ いっちょうばこやるから まるめておくれ い〜いや!
「おてぶし」もまた忘れられた遊びですが、ルールとしては中国の酒令*にある「蔵鈎(ぞうこう)」です。蔵鈎というのは要するに当て物遊びですが、伝説では漢の武帝にまで遡る歴史のある遊びだそうです。
これも輪になって遊ぶのですが、この遊びでは輪のコドモ達は動かず、オニが宝を探して歩くことになります。しかもオニとコドモは完全に対立的なのではなく、コドモはオニにヒントを出すことになるのです。
まず初めに宝を決めます。宝は木の実でも五円玉でも綺麗な小石でもいいのですが、ともかく手で包んで隠せるほどでなければなりません。次にオニを決めます。オニコドモ達の輪から離れて目隠しします。 「もういいかい〜」
「ま〜だだよ」 コドモ達はその間に宝を隠すコドモを一人選びます。その子は宝を両手で包み隠して胸の前で合わせます。残りのコドモ達全員が同じような恰好をして宝を隠し持つ振りをします。 「もういいよ〜」そうしてみんなで冒頭の歌を唄うのです。
オニはやってきて、コドモ達の輪の中を円を描いき唄に合わせて歩きます。そうしてオニが宝を持ったコドモのに近づくと、声を大きく(クレッシェンド)し、遠ざかると声を小さく(デクレッシェンド)するのです。これをヒントにオニは、「い〜いや!」のところで一人のコドモを指差します。その子がみごと宝を持っていれば手を開いて「大当たり!」となり、オニはコドモに戻って今度は今当てられたコドモがオニとなって輪を離れます。ところが外れだった場合は、指差されたコドモだけが手を開き、みんなで「大外れ!」と囃してやり直してす。私の子どもの頃は、こうして三回外れるとシッペでした。
このヒントの出し方は、「靴隠し」などで「火〜がついた、火がついた!」と囃(はや)すのに似ていますね。そうしてちょっと協力ゲーム的なところがあります。
かつて日本の村落共同体は、多くの農作業を共同でしなければならず、対立を含んでいてもつねに協力関係にあったと思われます。そうした中ではぐくまれた遊びが、オニとコドモの全くの対立にならないのは、なかなか興味深い現象だと思われます。
* お酒の席のゲーム。中国でもゲームをして、負けた人が罰としてイッキ飲みする