コラム

遊びに潜む民俗⑬

ライター:草場 純

 前回は、江橋崇著 『花札』に触れました。今回はそのあとを受けて、花札の絵柄について見ていきましょう。ただし、いわゆる図像学というのはとても難しい分野です。特に描かれた時代が古い物ですと、当時は自明であった絵の意味するところが、すっかり理解不能になっていることも少なくありません。特に絵そのものよりも、その社会的に意味するものとなると、つい恣意的な解釈が入りがちで、牽強付会な議論を振り回すことになりかねません。また、絵そのものにも長い変遷と変化があります。例えば有名な小野東風は、花札の図案としては最も新参者です。

 そこでここでは、敢えてあまり解釈を交えず、現在よく見られる花札にどんな絵が描かれているかを、素直に見ていくことにしましょう。

 月の並び方も、変化があったとも言われていますが、今述べたように現在普通に言われているものに沿って見ていきます。

 1月は松が描かれていて、鶴と太陽、あかよろしと書かれた赤い短冊、そしてカス札が2枚です。
 2月は梅で、梅に鶯と赤い雲、あかよろしと書かれた赤い短冊、そしてカス札が3枚です。
 3月は桜で、幔幕、みよしのと書かれた赤い短冊、そしてカス札が2枚です。
 4月は藤で、杜鵑と残月、字のない赤い短冊、そしてカス札が2枚です。
 5月は杜若で、八つ橋と赤い雲、字のない赤い短冊、そしてカス札が2枚です。
 6月は牡丹で、蝶と赤い雲、字のない青い短冊、そしてカス札が2枚です。
 7月は萩で、猪と赤い雲、字のない赤い短冊、そしてカス札が2枚です。
 8月は薄で、赤い空に白い満月、雁が三羽、そしてカス札が2枚です。
 9月は菊で、寿と書かれた赤い杯と赤い雲、字のない青い短冊、そしてカス札が2枚です。
 10月は紅葉で、鹿、字のない青い短冊、そしてカス札が2枚です。
 11月は柳で、小野東風と蛙、燕、字のない赤い短冊(ほかの短冊札にある背景の点々がない)、そして赤と黒のコントラストが派手な、雷と呼ばれるカス札が1枚です。
 12月は桐で、鳳凰の描かれた1枚と、カス札が1枚ですが、そのうち1枚は下半分が黄色く塗られています。
 そしてこれ以外に、何も描かれていない白い札が1枚入っているのが普通です。

 こうして見ると、鳳凰や小野東風を動物と見るかどうかはよく分かりませんが、鶴、鶯、杜鵑、蝶、猪、雁、鹿、小野東風、蛙、燕、鳳凰という11種の動物?が描かれていることになります。ほかに、太陽、幔幕、残月、八つ橋、満月、杯、雷、と七つの「動物でないもの」が描かれています。

 冒頭に述べたように、現在ではこれらの絵の「意味」については、はっきり言って分かりません。ただ、巷にはいろいろな俗説があります。それらは真相とは遠いのかも知れませんが、巷間伝えられていることですので、ある種「民俗」と言えないこともありません。そこで、次回はこの「俗説」について見ていきます。

初出:ゆうもりすと2014年3号


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