民俗学でよく着目されるものに、年中行事があります。この年中行事には遊びがつきものです。例えば追い羽根(羽根つき)や、独楽回し、かるた、凧揚げなどは、なぜか正月の遊びとされています。凧揚げは冬の季節風を考えれば納得できますが、独楽やかるたは、新春でなければできない遊びではないですね。つまり、独楽や追い羽根には、呪術的と言うと言い過ぎですが、それこそ民俗的な意味づけが背後にあるように感じられます。もちろんカルタなどが正月に遊ばれるのは、休日が続き、親戚が集まったり、普段時間の取れない親が一緒に遊んだりというような、現実的な要件もあるのですが、それも含めてハレの民俗と言えるでしょう。
これは当然、正月に限りません。例えば五節句を辿ると、四季を通じた遊びと民俗の様相が見て取れます。1月7日の人日(松の節句・七草の節句)はまだ正月のうちですが、3月3日の上巳(桃の節句)は、野遊びに出たり、雛遊びをしたりします。流し雛もまた、ようやく川遊びができるようになった、その初めだったのかも知れません。5月5日の端午(菖蒲の節句)も、私の子どものころは、鯉幟を上げ鍾馗を飾った前で、新聞紙で折った兜をかぶり、新聞紙を丸めた刀でチャンバラごっこをしたものです。これは江戸時代に「菖蒲」が「尚武」に通ずるとされて、武技が奨励された名残なのでしょう。7月7日の七夕(笹の節句)は、やはり川遊びにつながります。また、書や手芸の上達を星に願うとされますが、手芸はまた手遊びに通ずるでしょう。そして、9月9日の重陽(菊の節句)は、相撲をとったりする地方もあるそうです。
このような遊びは、もちろんその季節季節の条件を織り込んではいますが、それを超えた伝承的な「約束事」に彩られています。勝敗こそありませんが、とてもゲーム的ですね。五節句以外でも、冬の節分(立春の前日)の豆まきは、鬼やらいですからそのまま鬼ごっこにつながる感じがします。中秋の名月に供えられたお団子は、子どもたちが盗んでよいということになっていたので、私も子どものころ取ったことがあります。これなんかどこなく、万聖夜(ハロウィン)の「トリックオアトリート」を連想しますね。年中行事の中に遊びの民俗が見てとれるのは、洋の東西を問わないようです。